2015/04/23

穏やかな日々

包丁だけは左手で使います。そんな、普段は右利きの人の、特異な話をたまに聞きませんか?

ほかにも左利きなのに、ハサミは右手で使うとか、お習字の筆だけ右手に持つとか。

左利きと聞いただけでとっさに天才肌と思い込む単細胞な私のくせはともかく、両方使えるなんて、少なくとも平均よりかは器用で発想が独創的な人という印象、ないですか?

最近私が気に入っている絵本作家、ステーエフも、両手を器用に使いこなせる人の一人。なんでも彼は、絵は左手で描き、お話は右手で書くんだそう。彼の『こねずみとえんぴつ』という、かわいらしくて楽しいお話12話を集めた短編絵本集は、アイディア満載で子供向けとはいえ大人も思わず「なるほど」と頷いてしまう作品だ。くるみを使って船作りに励む小動物が出てきたり、大きさの違う木の輪を見つけて、例えば糸車だったり、水車だったり、それぞれの大きさに見合ったものを作る生き物たちが出てきたりする。そんな健気な生き物たちを見ていると、童心を取り戻すべく、私も森に入って同じことをしてみたくなる。

中でも、『たすけぼう』というお話は、読めば読むほと、生き方の参考になる。賢いハリネズミくんは、道で一見なんの役にも立たなそうな、ただの棒をひろう。友達のウサギさんに小馬鹿にされるもお構いなし。でも実は、その後に遭遇する数々の危機を乗り越えるときに、万能器具に変身させちゃうのだ。池に落ちたウサギさんを棒で引っ張って救ってあげたり、凶暴な狼を棒でひっぱたいたり、棒を支えに川の向こう岸へ飛び移ったり、という助っ人棒に!これにはウサギさんもびっくり。ただの棒を万能にするのは、ハリネズミくんの想像力と思いやり。様々な状況を難なく乗り越えて、しまいには、その万能器具となった棒さえもウサギさんにあげてしまうジェントルマンなハリネズミくん。だって、棒なんて、どこにでもあるから、と。要するに棒でなくても、石でもなんでも、いいわけよね。なんだって、結局アイディア次第。

そうだよなーーー。想像力と思いやりさえあれば、恐るものもなく、腹をたてることもなく、ケチることもなく、優しく楽しく、穏やかな日々が送れるんだろうなぁ、とつくづく思った。

作者のステーエフは、日本の訳者に会った時、「今日の雲ひとつない青空のような平和が続くよう祈っています」と穏やかな調子で語ったそうだ。今更両手使いにはなれないけれど、より一層穏やかな日々を送りたいから、まずは、想像力のトレーニングとして視点を右から左、左から右へと、移動させてみようかな。

(Anne)

『こねずみとえんぴつ』

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