2015/04/12

薄墨桜を纏う日

こんな花見スポットがあったとは!と、軽井沢から帰る途中の上信越自動車道上り線で、思わず叫んだ。

日曜日の真昼間でもけっこうな交通量で、走行時速はどんどん落ちていく。それが通常なら、渋滞嫌いの私の口から文句の一言二言飛び出してもおかしくないのに、今回ばかりは上機嫌。なぜって、そりゃあ両脇の桜ですよ。高速道路が並木通りごとく、桜で彩られている。この日、ここを走らなければ、上信越道がこんな花見スポットになるなんて知りもしなかった。次から次へと現れる堂々たる満開の桜を、時速80キロで走れば見逃してしまうけれど、ノロノロ運転なら助手席からはじっくり愛でることができるから、わたしゃご満悦。はぁー、艶麗とはこのことか!

ハンドルを握るウチの主人だって、さすがに左右に首を振ってみることはないけど、前方から桜が現れるたびに、きれいだね、きれいだね、と嬉しそう。桜って、すぐに散っちゃうところいいんだよねー、などと呟いている。

「すごいね。こんな風に咲き誇る満開の状態が一ヶ月続いたら、なんだか頭おかしくなりそうだよね」と付け足すので、まあ、そうかもね、とぼんやり思いながら、私の意識はすでに薄墨桜へ移っていた。

毎年、この時期になると思い出す、宇野千代の『薄墨の桜』という短編。そこにでてくる古木。それに、あの着物。。。

物語は、着物デザイナーだった著者自らを投影したような主人公が登場する。主人公は、素晴らしい薄墨桜があるときいて心躍らせ、その桜のイメージで着物を作り、伊勢丹で売る気満々。そんなプロットに胸がドキドキして、あっという間に読み上げてしまったのを忘れはしない。薄墨色の桜とは、どんな色をしていて、それがどんな着物になっているのだろうと、猛烈に見てみたくなる。主人公は、幹も枝も花も全部薄墨で仕上げていくと言っているから、おそらく薄グレーの桜の木が染められているような訪問着かなにかだろう。けれど、私の頭のなかには、限りなく薄グレーに近いピンク一色の、綸子かなにかの色無地が勝手にイメージされてしまっていて、昔の話、しかも、フィクションと知りつつも、なんだか今すぐ伊勢丹に行けばその着物に出会えるぐらいの妄想に、毎年、この時期になると駆られてしまうのだ。

早速主人公は着物制作のために、その素晴らしいといわれる薄墨桜を実際に見に行くことにする。ところが行ってみると、たいそう貧相で、拍子抜けしてしまうのだ。着物制作の一方で主人公は、樹齢1200年という枯れそうなこの古木を蘇生させようとする人々と関わることになる。その活動と桜本来の美しさとは裏腹に、ドロドロとした人間模様が展開され、読んでる方は思いがけずサスペンスに巻き込まれるのだ。短いのに、パワフルで妖艶な感じのする格調高い作品なのだが、やはり、この物語が最終的に私に残したのは、限りなく薄いグレーに近いピンクのみの色無地。私が勝手にイメージした着物だけど、憧れの気持ちは冷めない。いつしか、そんな薄墨桜色の着物を纏ってみたい。

主人と高速道路脇の桜の話をしつつも、思いはまだ見ぬ着物へと馳せていた。

Anne

久々着物

薄墨桜色の色無地ではないけれど、先日久々に着物を着ました。

スタイリストの岡部久仁子さんと。

『スタイリストの秘密!99%の人が知らない1%のおしゃれ術』というスタイリング本の出版のお祝い会に出席したら、着物を褒められ、ご褒美に大好きなワインをいただいた。

素敵な本、楽しい会、嬉しすぎるワタシ。ニコニコルンルン!

http://puntolinea.info/archives/2182

 

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