2015/03/22

デザートの腕前

先日、友人のフェリちゃん宅に招かれて再確認したことがあった。それは、フランス人はお菓子が好き、ということ。子供も含めた午後の立食パーティーだったこともあり、リビングに入るとテーブルの上には、ありとあらゆるケーキが並んでいた。ジュースやワインの手前には、おつまみは一切なく、りんごのタルト、木苺のクラフティ、チョコレートのブラウニー、ヨーグルトのムース、ナッツの入ったクッキー、それに大きなハリネズミの形をしたケーキがずらり。形が微妙に崩れているものもあったのが、さらに衝撃的だった。なぜなら、ひょっとしてこのケーキたちは、みんなの手土産など、お店で調達したものでもなく、手作りなのかもしれないと思ったからだ。料理は好きでもお菓子作りに一切関心のない、ワインの友好きのワタシからしてみれば、こんな面倒臭いことをやってのけれるフェリちゃんに慄いたのだ。恐る恐るきいてみた。「これ、あなたが全部作ったの?」と。「そうよ、でもこっちにはまだちゃんとしたオーブンがないから、これで作ったの」。旦那さんの仕事の関係でパリから東京に転居して間も無い彼女は、小さなトースターを指差した。そして「だから失敗作ばかり。ごめんなさいね。」と笑って謙遜する。はい、素晴らしい、降参です。

そういえば、フランスはデザートの国だった。デザート、おやつ、それがない生活なんてありえない、というくらい、昼食にも夕食も最後は必ず甘い物でしめる。それも、本当にガッツリと。ランチの定番、ステーキ・フリット(ポテトフライ)をたいらげると、半径20センチのタルトの1/6カットをもペロリと食べて、キュッとエスプレッソを飲むパリジャンを見るたびに、胃袋はどうなっているのか不思議に思う私。学校の給食でさえ、りっぱなデザートが付くぐらいだもの。それにたしか、フレンチフルコースのデザートも、3種類は盛るのが基本だった気がする。

そんなデザート大国のフランスで、昔、妹がタルトを作って来客をもてなしたことがあった。秋も終盤の頃、しっかり熟れた洋ナシを見つけたので、タルトにすると張り切った妹。結構自信満々に洋ナシタルトを来客にくばると、みんなからの「美味しい」というお褒めを期待した。ところが、「バナナタルトね!」との感想。妹は、母と私の顔を見て、「失敗したかしら」と眉をひそめた。素材の味を生かしきれなかった、味がぐちゃぐちゃになってしまった、っていうことかしら、と母も私も黙り込んだ。弱々しく「おいしくなかったかしらね?」と尋ねる母に、その来客は、声高々に笑って答えた。「違うわよ、とっても美味しいから、バナナタルトかと思ったわってことよ。フランスでは、もともとの素材がなんだかわからなくなるくらいに料理されているのは腕が良いっていうことなのよ」と。

ええっ、マジですか!京料理を筆頭に、和食の原則は、一にも二にも素材の味を生かすことなのに!

素材の味を失ってこそが美食文化に繋がる、とは!

デザート好きのフランス人ならではの、日本の味覚からすれば斬新な意見だった。

(Anne)

ハリネズミケーキ

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