2017/07/25

ただひとつのたからもの

こうも暑いと、人に会っても「こんにちは」を抜かして「暑いですね」が挨拶言葉になりますね。

いろいろな物を端折りたくなって、夏は何につけても簡略化するような気がします。

一番いい例が食べ物。冷たいキュウリを擦り下ろして鰹節とお醤油かけて、冷めたご飯にのせて食べるとか、お素麺を茹でて、茗荷を刻んで、つゆにサッと付けて食べるだけのお昼ご飯とか。最近では茹でなくても良い麺もありますね。端折る夏には重宝します。

というわけで、絵本も文字量がぐっと少ないすっきりとしたもので暑さをしのぎたくなりました。と、こじつけてみましたが、シンプルで素敵なお話2冊です。とはいえ文字量をよそに内容の方は、それはそれは深いです。大人でないと理解できないかもしれない程、重厚感あるメッセージです。絵の美しさにもうっとりします。そもそも私は、絵本は芸術作品としても引けを取らない、タッチの美しいものでないと子供の目に触れさせたくないな、と思っています。イイものを見せようと思っても、小さい子供を美術館に引っ張っていくのは難しい。でも家に居ながら、繊細で奥行きのある美意識を養うには絵本が一番手っ取り早いと思います。幼いころに培った感覚は一生残る筈。

さて、まず『たからもの』(ユリ・シュルヴィッツ作/偕成社)です。

これはあの極めて静寂で美しい絵本、『よあけ』の作者です。本作品では絵本界の勲章とも言えるコールデコット賞を受賞しています。夢のおつげに従い、宝物探しに出かけたとある男が、行った先で本当のありかを伝えられ、我が家に戻るといった、まるで『青い鳥』を凝縮したような物語です。

「もりをぬけ」

「やまをこえ」

苦味走る絵のタッチと寡黙なまでの文で広がる世界観が、カッコイイ程素敵です。

旅のあとにこの男は気づきます。幸せはすぐそばにある。回り道は無駄足ではない。それに気づけば、あとは心穏やかに過ごせるというメッセージは、まるで悟りを得るような落ち着きを心に宿してくれる、そんな作品です。子供は、もちろんそのような読解はできませんが、この作品を通じて、どこか不思議な静けさを心に刻んでいてくれれば、それでいいな、と思ってます。

次に『ひとつ』(マーク・ハーシュマン作/バーバラ・ガリソン絵/福音館書店)。

これは、数字の概念を表現した科学系の内容ですが、とてもそうとは思えないノスタルジックなタッチの絵で表現されているのが魅力です。1という数はどういうものなのか。とても小さい数でありながらとても大きな数。そんな1の解釈が面白く、数字嫌いもすんなり数の虜になりそうです。谷川俊太郎さんの訳も素晴らしい。英語でoneのところを、ひとり、いちまい、いっぽん、など、ややこしい日本語の数え方に置き換えても詩的に聞こえます。たとえば、こうです。

「たねは500こあるかもしれない でもかぼちゃは1こ」。

「せんしゅが9にん チームは1つ」。

「まめが7つぶ はいってる 1つのさやに」。

原文はどう表現されてるのかも気になるくらい、なんども読み返したくなります。こうして9、8、7、6、5、、、、とページをめくるごとに数が少なくなりつつ、最後は1つで1つの、スケールの大きなものが登場します。

「でもさいこうの1は ひとりっきゃいないぼく ひとりっきゃいないきみ」。

考え方の違う人、言葉の違う人、見た目の違う人、明白になにかに貢献している人、一見役にたっていなそうな人、頑張っている人、のんびりな人、どの人もみんなひとつしかない大切な存在です。一部の人の存在が無駄だと思われたり、人目を避けて暮らさなければいけない社会はおかしい。様々な人が隣り合わせに暮らして、それぞれが違う「ただひとつのたからもの」という認識を自然に得れる環境づくりが必要ではないでしょうか。

すべて、ただひとつのたからもの。人も、野生動物も、家畜も、番犬も、猫の手もかしてくれないウチの猫も、、、。

(Anne)

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