2015/10/28

大人のひとへおすすめしたい

またしても絵本の話。。。

とはいえまずは映画の話。ずいぶん前だが、ガス・ヴァン・サント監督の作品が好きだった時があったな。きっと今でも観ると好きなんだろうけれど。キアヌ・リーブスの美貌を知ったのも、リバー・フェニックスの死を悲しんだのも『マイプライベート・アイダホ』に心打たれたからだし、今に至るまでマット・デイモンのファンでいつづけているのも『グット・ウィル・ハンティング/旅立ち』を観てからだし、90年代はソウルやワールドミュージックばかり聴いていて、グランジには見向きもしなかった私が、カーク・コバーンの才能を知ったのも『ラスト・デイズ』だったな。『エレファント』の衝撃的な題材と流れるような撮影法、強さと脆さの間を綱渡りしているような青年たちの心の描写。うーん、やっぱり今でもまだ観たい作品だ。

ふとこんなことを思ったのは、『むこうがわのあのこ』という絵本を思いがけず図書館で手にしたからだ。

この『むこうがわのあのこ』、まずは大人のひとに読んで欲しい。舞台は、おそらく50年代アメリカの南部で、まだ根強く黒人差別が残っていた頃の話。高い柵で分けられた、白人専用の敷地でひとりぼっちの「あのこ」と、こちら側で友達たちと遊ぶ「わたし」の友情物語。ふたりは柵を越えてはいけないと禁じられていても、「座ってはいけないと言われていない」と笑って、仲良くなり、柵に腰掛け、世界は広いということに気づく。

こうして大人のわたしが説明すると、重苦しい感じになってしまうのだが、絵本自体は道徳的では一切なくて、もっと軽やか。子供らしい淡々とした素直な言葉で語られていて、教科書的な「柵」の説明はない。それでも大人が読めば、そこには辛い歴史の背景が読み取れる。それでも、素直な子供の、人と繋がり合いたいという気持ちは強く、差別を打ち砕くという読解ができて感動するんだと思う。実際わたしは図書館で涙を流して何度も読み返してしまった。写実的な絵のタッチも美しく、広大なアメリカの地にサワサワと風が流れるような、そんな空気が漂う。流れるような空気感、強さと脆さの間を綱渡りしているような子供たち、、、。そう思った時に、あ、この絵本、ガス・ヴァン・サント監督だったらどう撮るかな?ガス・ヴァン・サント監督に映画化してほしいなぁ。と思ったのだった。ただ、『むこうがわのあのこ』の女の子たちは、脆いほうには転ばず、きっと強い。

さて。大人が読むと泣いてしまうこの作品。絵本だけど、一体子供はどう感じるのだろう?わたしは息子に読み聞かせようと図書館から借りて、目につかないところに隠しておいた。その訳は、先にひとりで読んでしまうのが嫌だったから。この絵本は、まず私が読んで聞かせて、最初にどんな表情をするのか見てみたいという気持ちから、その最初のタイミングを逃したくなかったから。

まあ、でも、子供なんて思い通りにはいきません。隠しておいたのになぜか見つけて、「貪り食う」ように読んでいる。仕方がない、読み終えるまで待つとしよう。ということで、読み終えるまで待った。最後にパタッと本を閉じた息子は無表情。子供の感性を邪魔したくないから本当は感想は聞かない主義なんだけど、耐えきれなくなって聞いた。「そのお話、どうだった?」。息子は「うーん。。。あんまり面白くなかった」と。

そっか、そうですよね、そうですとも。ゲワゲラ笑うような面白いお話ではないんですよ。でも、あなたは夢中で読んでましたよね?

きっとなにか、ものすごく惹きつけられるものがあったに違いない。翌朝も、その次の日も、『むこうがわのあのこ』を読んでと言ってきたのだから。

どんなところが気に入ったのだろう?みんなが仲良くなって、縄跳びをしているところかな?もしかしたら、あの「柵」の上がものすごく素敵な場所に見えて、ぼくも腰掛けてみたいと思ったかな?

でも、もう根掘り葉掘り感想は聞くのをやめよう。子供にしか感じることのできない物語の世界に、大人の私が侵入するのは。そう考えると、この絵本はまず大人のひとにおすすめしたいけど、近くに子供がいたら、またどんな反応をするか見てみたいものだな、と思った。(by Anne)

むこうがわのあのこ

『むこうがわのあのこ』/出版社:光村教育図書/文:ジャクリーン・ウッドソン/絵:E.B.ルイス/訳:さくまゆみこ

 

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