2015/10/16

サバイバルはシェヘラザード方式で

先日、友人からこんな話を聞いた。

これからは、ロボットがどんどん私たちの仕事の代替わりをする時代になるから、仕事にあぶれず生き残れるのは、例えばこんな人よと。1、思いもよらない発想ができる人。2、初めての事に強い人。3、臆さずチャレンジできる人。4、、、以降は忘れた。というのも、最初の思いもよらない発想、というところで我が身はさることながら、我が子育てと照らし合わせて考え込んでしまい、4以降はもはや耳に入らなかったからだ。

いったい、そんな発想ができる子供にどうやったら育つんだ?私は、息子が生きる未来がどんなだろうと想像してみた。確かに、昔は細かい作業は人間にしかできなかった。でも今は、高度な外科手術ひとつとっても、ロボットに頼る時代。だって機械のほうが細かい作業ができるもの。計算にしてもコンピューターまかせ。と考えてゆくと、少し大げさに捉えてみてもいいかもしれない。SFでお馴染みの機械に乗っ取られる話はよもやファンタジーではなく、人間は本当にそのうちスクラップにされてしまうのかも。そして、もしかしたらSFの世界みたいに、ほんのわずかな人間だけが生き残るという筋書き通りの運命を辿ることになるのかも。そう考えると、やっぱり私も人の親。当然、息子にはスクラップにされるより生き残って欲しい。しかもロボットの奴隷ではなく、人間としての威厳を持って。でも、さっきも言ったように、どうやったら思いもよらない発想ができる人に育つんだ?

まあ、でも、悩んでいても仕方がない。とりあえず絵本でも読み聞かせて、愉快な知恵でも拝借しましょ。

ということで、私は目の前の『シンドバットの冒険』を手に取って、そしてハッとした。そういえば、いたではないか。『千一夜物語』の語り手、シェヘラザードという女性が。これぞサバイバルの象徴。そもそも私はですよ、シェヘラザードに憧れ続けてウン10ウン年。なのに、すぐに思いつかないなんて!美しいだけでなく、才女の中の才女、奇想天外な発想ができて、どんな堅物も魅了してしまう。こんな魅力的な人がいるのだろうかと思うのだ。(実在はしないけど)。『千一夜物語』で、最初の妃に裏切られて女性不信になり、それから姫をもらっては翌日殺すという悪事を働く王様のところに、シェヘラザードは自ら臆さず嫁ぐぎ、そこで天才的と思える話術を披露する。毎晩王様に、世にも珍しく、愉快で、華やかな冒険物語を語のだが、物語がクライマックスに差し掛かり、王様の高揚感が絶頂に達したそのタイミングで、「続きは明日」とお預けにしてしまうのだから、これには王様も続きが聞きたいがばかりに殺すわけにはいかない。こうして千一夜語り続け、とうとう王様は改心し、シェヘラザードは死を免れ幸せに暮らしたのだ、と13世紀以上も昔から語られてきている。

では、彼女の口からどんな冒険物語が語られたのかというと、これはみんなが知っている、『アラジンと魔法のランプ』、『シンドバットの冒険』、『アリババと40人の盗賊』など。あまりに聞きなれた話なので、スルーしそうになるが、よくよく考えてみると、めちゃくちゃ突飛、奇想天外な発想ではないかと思う。島だと思ったら大鯨の背中だっただとか、山だと思ったら象を捕らえて飛び立つ巨鳥の卵だったとか、谷底の宝石を拾うために生肉を投げて引っ付けて、それを巨鳥に掴んで持ってきてもらう、などといったエピソード。これが、ひっきりなしに続くのだから、シェヘラザードの想像力は計り知れない。といっても実在しないから、息子の生き残りを願って、彼女の爪の垢を煎じて飲ませるわけにもいかない。せめて「英知によるサバイバル」のお手本として、『千一夜物語』を刷り込みたい。そう思って度々読み聞かせてみたが、甲斐もなくウチの子は魚図鑑を開く。寝ても冷めてもサメ、なんといってもサメが好き、といったこの頃だけに、サバイバルの話をしても返事はこうだ。「知ってた?ホホジロザメって天敵いないんだよ!」。私にとってはシェヘラザードでも、息子にとってはホホジロザメこそサバイバルのヒーローのようだ。(Anne)

アラビアンナイト

シェヘラザードへの思いが高じて集めた『千一夜物語』の数々。左から、『アラジンとふしぎなランプ』(小学館)、『アラビアン・ナイト』(福音館書店)、『アラジンとまほうのランプ』(ポプラ社)、『シンドバッドと怪物の島』『シンドバッドのさいごの航海』、『シンドバッドの冒険』(三冊共に岩波書店)、『アラビアン・ナイトのおはなし』(のら書店)。

 

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